スカーレット A・リプリー | tomokoの読書感想文

スカーレット A・リプリー



著者: アレクサンドラ リプリー, Alexandra Ripley, 森 瑶子
タイトル: スカーレット



著者: マーガレット ミッチェル, Margaret Mitchell, 早野 依子
タイトル: 明日は明日の風が吹く―女はすべてスカーレット

賢さとも、あざとさとも言いかえれそうで、言い換えるこのができない究極の強さ。スカーレットが現在でも魅力的なヒロイン像として挙げられる要因があるとすれば、それであると思います。

その深さはスカーレット自身すら気づいていないに違いない。「風」から、「スカーレット」三巻までは、ひたむきに前をみて突っ走る彼女の姿しか印象に残らないのだが、スカーレット第4巻で始めて、円熟味を見せるスカーレット。

30歳を迎え、レットを失い、愛娘キャットを得る。この途方もなく大きな喪失感と充足感を背負うことでスカーレットは女の質が底上げされたのでは?

その中でレットへの思慕を表す文章はこちら。

どんなにきれいに着飾ったって、真に見て欲しい人はいない。完璧なレディを演じるのも、領主館を美しい屋敷によみがえらせても、それを見せたい唯一の男、レットがいなければ全てはあまりにも虚しかった。

スカーレットの中にある喪失の裂傷は彼女が考えるほど、小さなものではなかった。彼女には何かに打ち込む、そのもとになるものが無かった。

その頃のスカーレットは風に吹かれる葦そのものであった。
傍で色々指図してくれるのはありがたかった。忙しくしていれば、心の奥底の傷を覗き込まずにすむからだった。




読者の立場から言えば、その喪失感にスカーレット自身が気付いていないところが、その傷の深さを物語っていると思いました。